離婚協議を終わらせたからといって安心はできません。
きちんと離婚協議書を作成する必要があり、それは公正証書であることが望ましいです。
このページでは離婚協議書についてあなたが知っておくべきすべての知識について東京弁護士会・弁護士須田啓介がお伝えします。

ご存じですか?養育費の不払い率は8割にも上ること

厚生労働省の2011年度の全国母子世帯等調査によると、養育費の取決めは協議離婚の4割程度でしていたにもかかわらず、実際にお金を受け取っているのは2割に満たなかったそうです。
たしかに離婚をする以上は、面倒だ・もう二度と関わりあいたくないという気持ちがあるのはもっともなことですが、現実的な数字としてこのような数字が出ている以上目を背けてはいけないと弁護士として。お伝えせざるをえないのです。

離婚協議書にしなかった場合、慰謝料・養育費を取るまでの手順はこんなにかかる

もし離婚協議書をかかずに、口約束だけでした約束を実際に振り込ませるのにはどんな手間がかかるのでしょうか?

まずは2週間程度の期限を切った内容証明郵便

まずは任意の振り込みを促す手段としては、内容証明郵便(郵便局のページにリンクしています)の送付が考えられます。
この時点で応じてくれば、早急にまとまっていた協議離婚の内容を公正証書(日本公証人連合会にリンクしています)にしてしまいます。
この期限は通常2週間程度はかかると思ってください。

裁判が終わるまでは最長2年はかかる!?

内容証明を送ってみたけれども応じてこない場合や、そもそも内容証明を受け取らないような場合には裁判を提起することになります。(裁判所のホームページ
訴状を作成して、証拠をかきあつめ、第一回の審理(口頭弁論期日)にたどりつくまで1か月半程度はかかります。
裁判が終わるまでには相手が争ってくるかどうかで3か月~1年以上、控訴をされると、さらに3か月以上はかかるでしょう(上告審までいくことは、よっぽどの事がない限りありません)。

さらに強制執行に移った場合には3か月以上!

判決を無視された場合には強制執行手続きに移ることになります。
執行裁判所というところに、強制執行の申立をして、相手の財産に対する執行をすることになります。
この手続きがおわってお金が手元にくるまでは、3か月は見てほいたようがよいでしょう。

離婚協議書を公正証書にしておけば、執行までの全日程を省略できる

離婚協議書を公正証書にしておく最大のメリットは、公正証書は「執行認諾約款」というものがついているものについては、裁判の手続きを省く事が可能なのです。
簡単に言うと「裁判に勝った」という状態を作っておくことが可能となります。

離婚協議書の書き方、項目別注意事項

離婚協議書にはどのような事を書くのか、基本事項としては以下のような事になります。

  1. 離婚を合意した旨の記載
  2. 慰謝料に関する事項
  3. 財産分与に関する事項
  4. 親権者に関する事項
  5. 養育費に関する事項
  6. 面接交渉に関する事項
  7. 年金分割に関する事項
  8. 公正証書を作成するか否か

それでは以下離婚協議書の書き方の具体的事項について詳説いたします。

離婚協議書のタイトル

タイトルをどのようにしなければならないかというのに、決まりはありません。
弁護士が作成する場合にはタイトルは「離婚協議書」としていますが、「合意書」とするものも散見されます。

離婚協議書の冒頭部分(柱書)

当事者についての記載と、各条文について合意した旨の記載をします。たとえば次のように記載します。

●●●●を甲として、○○○○を乙として、離婚について協議した結果、次のとおり合意した。

離婚を合意した旨の記載

離婚協議書の中記載する中身としては、

  1. 離婚に合意したこと
  2. 離婚届けに各自署名捺印をしたこと

を記載します。
具体的な記載例としては次のようになります。

第1条 甲と乙は協議離婚することとし、離婚届に各自自書署名捺印した。

慰謝料に関する事項

慰謝料とは、被った精神的苦痛に対する損害賠償請求のことをいいます。慰謝料についての詳細はこちらのページを参照してください。
話し合いで決めて書面にすべき事項としては以下のようになります。

  1. 慰謝料を支払うか支払わないか
  2. 慰謝料を支払うとしてその額はいくらにするか
  3. 慰謝料の支払いを一括でするか分割でするか
  4. 慰謝料の支払いをいつまでにするか
  5. 慰謝料の支払いをどのような方法でするか(手渡し・銀行振込など)
  6. 振込手数料の負担をどちらにするか
  7. 分割の場合には期限の利益の喪失や

具体的な記載例としては次のようになります。

(慰謝料)
第○条
甲は、乙に対し、慰謝料として金●●●万円の支払義務があることを認め、これを(一括で・●回に分割して)、平成●●年●月から平成●●年●月まで、毎月末日限り金●万円を乙の指定する金融機関の預貯金口座に振り込んで支払う。
2 振込手数料は甲の負担とする。
3 甲について、下記の事由が生じた場合は、乙の通知催告を要さず、甲は、当然に期限の利益を失い、乙に対して残金を直ちに支払う。
(1) 分割金の支払いを一回でも怠ったとき。
(2) 他の債務につき、強制執行、競売、執行保全処分を受け、或いは公租公課の滞納処分を受けたとき。
(3) 破産、民事再生手続開始の申立てがあったとき。
(4) 手形交換所の取引停止処分を受けたとき。
(5) 乙の責めに帰することができない事由によって、所在が不明となったとき。

財産分与に関する事項

財産分与とは、婚姻生活において、夫婦が協力して得た財産を、夫婦それぞれの個人財産に分割することをいいます。
財産分与についてはこちらのページを参照してください。
話し合いで決めて書面にすべき事項としては以下のようになります。

  1. 財産分与を行うかどうか
  2. 行うとして、対象となる財産は何なのか
  3. 対象となる財産をどのように分配するか
  4. いつまでに分配をするのか
  5. 金銭について一回一括で支払うのか、分割で支払うのか

具体的には以下のように記載します。

(財産分与)
第●条
※金銭債権の場合
1 甲は乙に対し、財産分与として金○○万円を平成○○年○月○日までに乙の指定する口座へ振込送金の方法により支払う。
2 振込み手数料は甲の負担とする。
※不動産の所有権を移転させる場合
1 甲は乙に対し、財産分与として甲所有名義の下記不動産を譲渡し、平成●●年●●月●●日までに乙のために所有権移転登記を行う、
2 登記手続きに要する一切の費用は甲の負担とする。
不動産の表示
土地 所在
地番
地目
地積
建物 所在
家屋番号
種類
構造
床面積

親権者に関する事項

子供がいる場合には、親権者をどちらにするか決定しなければなりません。
親権についての詳しい事項はこちらを参照してください。
子供が複数いる場合には、どの子がどちらの親権に服するかを明確に記載しましょう。
記載の方法は以下の通りです。

(親権)
第●条
甲及び乙は、甲乙間の長男●●●●(平成●●年●●月●●日生まれ、以下長男丙という。)の親権者を乙と定め、乙において監護養育する。

養育費に関する事項

養育費の支払いについての事項を記載します。
養育費の内容についてはこちらのページを参照にしてください。
記載の方法としては以下のような事項を定めます。

  1. いくらの養育費の支払いをするのか
  2. いつまでの養育費の支払いをするのか
  3. どのような方法で養育費の支払いをするのか
  4. 支払いにあたっての手数料の負担はどちらがするのか
  5. 当事者が再婚した場合にどのように取り扱うのか

といった事項について記載をします。特に大学進学を視野に入れている場合にはこの部分は綿密に書いておくべきことになります。
具体的には次のような記載をします。

・甲は、乙に対して、丙の養育費として、平成●●年●月から平成41年3月まで(丙が4年制大学、短期大学、専門学校等の大学等(以下「大学等」という。)を卒業する月まで。)、毎月末日(支払期日が金融機関の休業日に該当するときは翌営業日とする。以下支払期日について同じ。)限り、毎月金5万円ずつ、乙が指定する金融機関の預金口座に振込んで支払う。
・振込手数料は甲の負担とする。
・甲及び乙は、丙が大学等に進学しなかった場合や、進学浪人、留年などによって第1項に定めた期間以降も大学等に在籍していた場合には、養育費の支払い終期について甲乙間で協議して決定する。
なお、大学等に進学しなかった場合には、本項の学費に要する養育費を支払う必要はないものとする。
・甲は、丙の高等学校の学費に要する養育費として、次のとおり乙が指定する金融機関の預金口座に振込んで支払う。振込手数料は甲の負担とする。
平成●●年●月末日限り、金●●万円
平成●●年●月末日限り、金●●万円
平成●●年●月末日限り、金●●万円
甲は、丙の大学等の学費に要する養育費として、次のとおり乙が指定する金融機関の預金口座に振込んで支払う。振込み手数料は甲の負担とする。
平成37年2月末日限り、金〇〇万円
平成38年2月末日限り、金〇〇万円
平成39年2月末日限り、金〇〇万円
平成40年2月末日限り、金〇〇万円
ただし、進学浪人した場合には、大学等に入学する年の3月末日から卒業する日の属する前年までの毎年3月末日限り支払う。
なお、大学等に在籍していない期間については、本項の学費に要する養育費を支払う必要はないものとする。
・甲及び乙は、上記養育費のほか、丙のための特別な事故、病気等により、その他の特別な出費が必要となった場合には、その費用の負担について別途協議して決定する。
・上記養育費は、物価の変動その他の著しい事情の変更に応じて甲乙協議のうえ増減できるものとする。
乙が再婚して再婚相手と丙が養子縁組した場合には、丙が養子縁組した月の翌月以降の養育費、学費、特別な費用の支払いについて協議することができる。
・甲が再婚した場合には、本契約に変更はないものとする。

面会交流に関する事項

面会交流に関する詳しい事項についてはこちらをご覧ください

面会交流に関する事項を決定した場合には、詳しく情報を記載します。
この記載を詳しくしなければ、後々合わせてもらえない場合に間接強制という手段がとれない事になってしまうからです。

  1. 頻度はどのようにするか
  2. 1回の面会の時間はどの程度与えるか
  3. 面会の日時
  4. 面会の方法についてどのようにするか

甲の丙に対する面接交渉については、以下の内容とする。
(面会交流)
第●条
1 面接は月に○回、○時間以内とし場所は甲乙協議の上決定する。
2 乙は、甲が丙、丁、及び戊と○ヶ月に1回、宿泊を伴う面接交渉をすることを認める。
3 面接時は事前に甲は乙に連絡するものとする。

年金分割に関する事項

年金分割とは、婚姻期間に支払った年金保険料は夫婦共同で納めたものとみなして、将来の年金額を計算するものです。
例としてわかりやすいのは、専業主婦の場合は、夫が払った保険料の一部を妻が払ったものとみなして、将来支払われる年金額が計算されることになります。
最大の割合は5割までとなり、その場合の文例のところでは0.5と記載をします。

甲(第1号改定者)及び乙(第2号改定者)は厚生労働大臣に対し、厚生年金分割の対象期間に係る被保険者期間の標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合を●●とする旨合意し、乙は、離婚届提出後2箇月以内に厚生労働大臣に対し、合意内容を記載した公正証書の謄本を提出して当該請求を行うこととする。
甲(昭和○○年○月○日生)(基礎年金番号 ○○-○○○○○)
乙(昭和○○年○月○日生)(基礎年金番号 ○○-○○○○○)

公正証書を作成するか否か

一番重要な事なのですが、この離婚協議書を公正証書にするかどうかを決めます。
通常は離婚協議書を作成する場合には、公正証書にします。でなければほとんど作るメリットがないからです。
公正証書にする場合には以下のような記載をします。

(公正証書)
第●条
甲及び乙は、本合意につき、強制執行認諾約款付公正証書を作成することを承諾した。

その他離婚協議書に定める事項

離婚協議書を公正証書にする意味は?

協議離婚書を公正証書にする意味としては次のような理由があげられます。

離婚協議書のひな形

以上を踏まえて、離婚協議書についてのひな形例を挙げてみます。

離 婚 協 議 書

夫・○○○○(以下「甲」という)と妻・▲▲▲▲(以下「乙」という)は、本日、以下のとおり合意した。

第1条(離婚の合意・離婚届の提出)
1 甲と乙は、協議の上、本日、離婚することに合意し、各自離婚届に署名・捺印したことを確認する。
2 甲は、前項の離婚届を乙に託し、乙は、直ちに、□□市役所に離婚届を提出する。

第2条(親権者)
甲と乙は、本日、甲と乙の長男■■■■(平成  年 月 日生。以下「丙」という。)の親権者を乙と定め、同人において監護養育することに合意した。

第3条(養育費)
1 甲は、乙に対し、丙の養育費として、平成  年  月から丙が満  歳に達する年の翌年3月(平成  年  月)までの間、1か月金▲▲万円の支払義務があることを認め、これを毎月末日限り、乙の指定する金融機関の預金口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。
2 甲と乙は、第1項に定める養育費の他に、丙の進学、重大な事故・病気等により特別の出費が生じた際は、双方誠実に協議の上、その負担割合を決定することを約束する。

第4条(面会交流)
1 乙は、甲に対し、丙と月に1回程度の面会交流をすることを認める。
2 面会交流の具体的な日時、場所、方法については、丙の体調や心情にも十分配慮した上で、その都度、甲乙間で事前に協議して決めるものとする。

第5条(財産分与)
1 甲と乙は、甲名義の別紙物件目録1及び2の各不動産(土地・建物)(以下「甲宅」という。)について、甲の単独所有であることを確認する。
2 甲は、乙に対し、財産分与として金○○○万円の支払義務を負い、平成 年月 日限り、乙の指定する金融機関の預金口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。

第6条(清算条項)
甲と乙は、本件離婚に関し、本合意書に定めるほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する。

甲及び乙は、本合意書が有効に成立したことを証するため、本合意書2通に署名(ないし記名)・捺印をした上で、各自1通ずつ保管する。
以 上
平成  年  月  日

甲 【住所】

【氏名】                  ㊞

乙 【住所】

【氏名】                  ㊞

以上は一番シンプルな形の離婚協議書のひな形になります(ワードファイルのダウンロードはここをクリックすればできます)。

離婚協議書作成にかかる費用

離婚協議書の作成に必要な費用にはどのようなものがあるでしょうか。

離婚協議書自体にかかるお金

公証人手数料

公証人手数料は一律のものではなく、公正証書に記載された財産分与や養育費等の価額によって変動します。
具体的には

  1. 100万円以下 5000円
  2. 100万円を超え200万円以下 7000円
  3. 200万円を超え500万円以下 11000円
  4. 500万円を超え1000万円以下 17000円
  5. 1000万円を超え3000万円以下 23000円
  6. 3000万円を超え5000万円以下 29000円
  7. 5000万円を超え1億円以下 43000円
  8. 1億円を超え3億円以下 4万3000円に5000万円までごとに1万3000円を加算
  9. 3億円を超え10億円以下 9万5000円に5000万円までごとに1万1000円を加算
  10. 10億円を超える場合 24万9000円に5000万円までごとに8000円を加算

以上が費用の早見表となります。

協議離婚書を専門家に依頼する場合

協議離婚書の作成はこのページで長々と記載させていただいている通り大変複雑です。
そこで専門家に依頼をするという方法もあります。
離婚協議書について依頼をする場合は次のような専門家が居ます。

弁護士

もちろん私たち弁護士は離婚協議書の作成において相手方と代理をして交渉をして書面の作成を行うことができます。

行政書士

離婚協議書のみ作成すればよいとのことでしたら、行政書士も権利義務に関する書面の作成代行としてこれを行うことができます。
ただしあなたの代理人として相手方と交渉をすることは行政書士にはできませんので注意が必要です(これを行政書士が行うと弁護士法違反になります)。

まとめ

このページでは離婚協議書をつくるうえで、どのような事項を定めて、どのように書面化して、どうして公正証書にしたほうがいいのか、どうやって公正証書にするのか等についてお伝えしてきました。
添付のひな形はごく簡単なものなので、冒頭であなたの離婚の実情にあった事項を付け加えていただくのが最適ですが、書類の書き方に失敗をするとあなたの生活を逆に脅かしかねません。
できれば弁護士のレビューを受けたほうがいいと思いますので、ぜひ一度ご相談の予約を入れていただければ幸いです。

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須田総合法律事務所、代表弁護士の須田啓介です。ご相談おまちしています。


離婚協議書の作成事例

相談の背景

Fさん夫婦には2人の子供がおりましたが、子供が生まれてから性格の不一致が顕著となります。
離婚の相談をしたかったのですが収入のなかったFさんは費用を抑えようと、インターネット上の情報をみながら独力で離婚協議書を作成しようと試みます。
しかし子供の養育費に関する事や年金分割、不動産の移転登記等など法律の知識のないFさんは自分一人で離婚協議書を記載するのは困難だと考え、当法律事務所の相談を受けることになりました。

相談と弁護士の活動

いざ法律相談をしてみると、もっと養育費・慰謝料額や財産分与で経済的給付を得ることができることが判明したので、Fさんは弁護士に依頼。
当事務所の弁護士の判断で、弁護士費用は分割で支払うこととなりました。
夫はすでに離婚することに同意しており、養育費・慰謝料・財産分与・年金分割ともに具体的な裏付けある考え方と条件を示したところ、数度の折衝を重ねた後に、「それでいいです」ということでした。

解決

弁護士は離婚協議書を夫と取り交わし、公正証書にして、事件は解決しました。本件は3か月の期間で、弁護士費用は30万円程度でした。