民法は770条1項2号において離婚原因として「悪意の遺棄」を挙げています。
具体的にはどのような行為を指すのでしょうか、このページではその意味について東京弁護士会・弁護士須田啓介がお伝えします。

悪意の遺棄とは

まずは難しい法律用語から申し上げますと、「正当な理由なく民法752条に規定する同居・協力・扶助義務を履行しないこと」をいいます。
民法は752条で、婚姻している夫婦に上記のような義務を課しています。
この義務を履行しないこととは、具体的には、家にもいない・家庭の協力もしない・お金も入れない…といったような状態を指します。

悪意の遺棄には行動が必要か?

たとえば同居ができないような状況としては、たとえば夫が自分から出て行ってしまうことも考えられます。
しかし逆に、夫が妻を家を追い出すような行為でも同居ができなくなる事もあるでしょう。
このような場合でも夫による「悪意の遺棄」にはあたりうると解釈されています。

正当な理由はどのように判断されるか

以下のような要素を総合判断して考慮します。

  1. 別居の目的
  2. 別居による相手方の生活状況
  3. 生活費の仕送りがされているかどうか
  4. 別居の期間

悪意の遺棄があった場合の不法行為の成否

悪意の遺棄があった場合には不法行為の成立が問題になります。
最高裁のホームページに載っている判例をご紹介します。このケースでは不法行為は成立しなかったとする事例です。
全文はこちらから(最高裁判所のホームページ)

事例の紹介(悪意の遺棄の部分についてのみ)

妻側の主張

  1. 愛人との同居のためにたびたび家を出て生活費を入れていない
  2. そのため家庭を守るために働き続けくも膜下出血をはじめとする様々な病気に襲われる
  3. さらにその心労から自殺未遂をはかるまでに至る
  4. 生前贈与をうけた不動産を母名義に移し替えている
  5. 夫は造園業を営む裕福な家庭で運送に従事・会社役員として月収100万程度の収入があった

夫側の主張

  1. 自分の派手好きを棚に上げている。昭和56年8月から昭和58年7月まで,原告は,被告に対し月15万円位の金銭を送り続け,平成元年2月から平成2年10月までは総額111万円を送金している。原告は,明確な証拠資料があるだけでも1200万円以上の金銭を支払っている。
  2. 給料の差し押さえにあって、婚姻費用の分担はしている
  3. 病気の際には夫の母が看病に行っているが、夫がヘルニアを患った時には見舞いにさえこなかった
  4. 月収100万と主張するが、経費を引くと自由になる金銭は少ない
  5. 生前贈与をした不動産は別のところの不動産を購入する際の原資にしたものである

裁判所の判断

  1. 婚姻費用の分担は給料差し押さえなどでしている
  2. その後も給料を差し押さえているが、そのころには十分な収入があったものと認められない
  3. よって婚姻費用の分担をしていないとはいえず、不法行為は成立しない

まとめ

このページでは悪意の遺棄とは何か?どのような場合に悪意の遺棄が成立するのか?悪意の遺棄が不法行為になることもあること、判例で争われた事例の紹介をしました。
裁判所のホームページにのっている判例はごくわずかなものです。
あなたの事例で、悪意の遺棄にあてはまるか、仮にあてはまらかったとしても他の離婚原因にあてはまらないか、まずは法律相談をうけていただければと思います。

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須田総合法律事務所、代表弁護士の須田啓介です。ご相談おまちしています。